こんにちは。
神奈川 横浜の不動産コンサルタント、チャレンジ・スペースの梶谷です。
先日、とあるビルオーナーさんからご相談を受けました。
ご相談の内容は、
「新規募集から数カ月経ったが、引き合いや内覧がぱったり止まってしまった。ビルの募集賃料を下げようかと考えているのだが、いくら位にしたら良いのだろうか?これまで他の不動産会社からも相場を考慮して競争力のある坪単価を提案されてはいるが、本当にそれでいいのだろうか?」
という内容でした。
私がお答えした結論からお伝えすると、
「その答えは、オーナーさんである〇〇さんの心の中ではきっと決まっていると思いますよ。だから、一度ご自分の本当の思いに正直になられてみてはいかがでしょうか?」
とまずお答えしました。
以上、何ともファジーな答えにみえると思いますが、私はこれしかないと思っています。
賃貸経営という「事業」を行っているからには、必ず目的があるはずです。
でも、そんなことお伝えすると、
「自分は新規に物件を購入して賃貸オーナーになったのではなく、昔からの地主で、投資というよりも節税で勧められて賃貸経営を始めた」とか、
「相続で賃貸物件を引き継いだだけだ。」
など、色々な反対のご意見を頂戴しますが、
そうは言ってもいづれにしても、
「今、賃貸不動産のオーナーである理由は必ずあるはずですよ。」
とお伝えしています。
すると、それまで消極的で受け身であったオーナーさん達も
賃貸経営を始めた経緯や、親から引き継いだ経緯や、
これらにまつわる本音ベースの話をされるようになってきます。
それまでは、近隣の競合物件や周辺の不動産会社が提案してきた坪単価から割り出された年間予想収入と、目標に掲げている年間収入との差額についての葛藤で頭を悩まされていたはずが、
一転、実はそれとは全く関係のない話、
例えば、家族のこととか、
先代のオーナーとの関係や思いとか、
近隣の人との人間関係とか、
以外に多いのは、身内や近しい人との人間関係や、
もしくは自分自身が大切にする価値観に対するプライドなど、
お金とは縁遠いことを熱く語られるケースが非常に多いという事です。
もちろん、収益率を第一に考えて物件を購入するいわゆる不動産投資家にとっては「収益の最大化」がオーナーの目的として最重要課題であることは重々承知していますが、
世の中には色んな人がいるのと同じで、賃貸経営をしている不動産オーナーの中にも色んな方がいるということを知っておいて頂きたい、という話です。
昨今の不動産投資ブームで、一般の個人投資家の方々も専門家顔負けの知識を身に付け、その流れで不動産投資の目的は「収益の最大化」オンリーという雰囲気が醸成されてきているようにも思いますが、果たして実態はそうでしょうか?と私は思っています。
昔からの地主さんや、事業を営んでいたビルオーナーさんなどにとっては、そもそも賃貸経営を始めた動機や、また今現在賃貸経営を行っている目的は、「収益のみを追求する」不動産投資家とは違うのではないでしょうか?
もちろん、収益の最大化を目的とする不動産投資家から学ぶべきことはたくさんあるとも思っています。
しかし、賃貸経営を始めたそもそもの目的が違う人が、違う目的を持つ人と同じ判断基準で物事を決定してしまうことは、そのこと自体に大きなリスクがあるのではないでしょうか?また、それで果たして、そもそもの目的を達成できるのでしょうか?
さて話を戻すと、今回のケースでは、
まずはそもそも賃貸経営を行う本当の理由を正直に自分に確認し、
ご自身の「賃貸経営を行う本当の目的は何なのか?」を知る。
その上で、一番大切な事(目的)を達成するためには、
賃料は最低いくらあったらいいのか?
の順序で考えることによって、
自然と、自分の「真の目的」にあった適正な募集賃料の設定ができるものと考えています。
ただし、一つ注意ですが、
そうやって求めた募集賃料でテナントが決まるかどうか、については全く別問題だということを頭に入れておいてください。
では、なぜ、今までこんな話をしてきたかと言うと、それはたまに次のようなケースがあるからです。
例えば、周辺の賃貸物件の相場について詳しく知る不動産会社からの提案を受けて募集賃料を設定し、募集を開始し、早々にテナント(入居者)が決まったとします。
でも、その賃料では、利益が出ない。
または、思ったよりも利益が少なくて、生活費が賄えない、
なんていうケースがあり得るということです。
このケースにおいて、オーナーの目的が収益の最大化や生活の維持であるとしたら、このケースではオーナーの目的を達成しない、ということになります。幾らテナントが決まったとしても、これだったらやらない方がましだった、ということになります。
これは一例ですが、賃貸経営においては、それだけ「オーナーの目的」が大切であり、かつその目的はオーナーの置かれた状況や人間関係、性格などによっても実に「多種多様」である、ということをお伝えしました。