こんにちは。
不動産コンサルタントの梶谷です。
今日も前回の続きで、
「不動産コンサルタントの役割」の第三回目です。
前回、前々回を読まれていない方は、こちらをお読みください。
一般の人から見た不動産業界の抱える問題とは?~不動産コンサルタントの役割①
不動産と医者の世界の類似点とは?~不動産コンサルタントの役割②
さて、前回の続きです。
医療の世界では、
まず身近な診療所の主治医が総合的に患者の状態を見立てた上で、
必要とあらば、大病院などの専門機関を紹介し、
高度専門医療を受けて行く、
という流れになっています。
ところが、不動産の世界において、
一般の方々がやっていることは、大抵は、
いきなり、高度専門医療を、主治医もいない環境で
自ら選択して受けている
というのが、私の感じている現状認識です。
前回もお話したように、
不動産の世界においては、様々な分野があります。
そして、それらを提供する会社や専門家も
決して全ての分野を取り扱っているわけではなく、
大抵は何か一つを得意分野とし、
すなわち「売り」となる商品やサービスを持っていて、
当然、それをお客様にお勧めしたいわけですね。
例えば、新築の分譲マンションを開発、販売している会社は、
大手の総合不動産会社でもない限り、
それをメインに売っています。
また、大手の不動産会社であったとしても、
新築マンションと中古住宅の仲介では、
部門が違うだけでなく、
場合によっては、分社化して会社が違うケースもあります。
いづれにしても、どんな営業マンでも、自分の営業成績を上げたいだけでなく、
会社から課せられた営業目標やノルマがあるため、
当然、自分の会社や部門にとってのメインの商品をお勧めしたいのは
ある意味当然かれしれません。
それにも関わらず、
不動産の世界では、様々な媒体や広告を見て、
一般の方々が、専門家の見立てやアドバイスを得ないまま、
さらに、いきなりダイレクトに、
細分化された各種商品やサービスを提供している専門業者の元へ
自ら進んで足を運んでいる
というのが現実であろうと思います。
昨日までにもお伝えしてきたように、
不動産という商品は、世の中にある様々な商品やサービスの中で、
恐らく最も高額な商品・サービスになろうかと思います。
さらに、不動産の世界は、医療の世界と同様に、
その専門性から、一般の人々にとっては、
中々、その商品やサービスの詳細については一人で理解や判断ができるものではありません。
ましてや、不動産の取引など、
普通の人であれば、一生のうちでそんなに何回もするものではないため、
知識やノウハウを蓄えるための経験を積むことも中々できません。
このように、一般の人が、主治医のような自分をよく知る
信頼できる専門家に相談もできない環境の中で
人生において、めったに経験することのない大きな決断を
各分野のプロを相手にしていく
というのはいかがなものなのでしょうか?
では、このような環境の中で、
どうすれば、一般の人が安心して後悔のない
不動産取引をしていくことができるのでしょうか?
私は、これも医療の世界と同様に、
二つの方法があると思っています。
一つは、信頼できる人からの紹介を得た上で、
取引の相手先や専門家を選んでいく、という方法です。
お医者さんの紹介はよく聞く話ですよね。
これは古典的なように思えますが、
紹介には、紹介する側、される側に
人間関係上、大きな制約が出てくるため、
下手な紹介の受け渡しは、
一般的には中々できるものではなく、そのためにとても有効なは方法だと思います。
ただ、紹介にもリスクがありますので注意は必要です。
つまり、紹介してくれる人を選ぶ時点で、
ある意味、その人の考え方に従ってしまうリスクが高まるということです。
そのため、紹介される側になる時は、
紹介してくれる人が、自分のことをどこまで知っているのか、
ということを心の中で見定める必要はあると思います。
さて、もう一つの方法は、
自分のことをよく理解している、
もしくは、自分のことを理解しようと努めてくれる、
かつ、自分の専門分野だけでなく、業界の構造や仕組みを広く把握し、
さらに、広い業界の中において、様々な専門分野における信頼できる専門家とも確かなネットワークを持っている
そんな、不動産に関する信頼できる専門家を身近に持ち、
何かあったらまずはその人に相談できる、という環境をつくっておくということです。
これは、医療の世界における、
自分の今も過去も良く知る、できれば家族のことまで知っている、
信頼できる、地元の診療医、主治医を持ち、
その先生にまず相談する、ということと同じです。
我々も、体調が悪くなって不安になったら、
大抵は、まず地元の診療所に行って診察してもらいますよね。
また、会社の定期健康診断で数値が引っかかり、
「専門機関による要再検査」
なんていう紙をもらうと、もうたちまち不安になりますよね。
そんな時に、
自分の今だけでなく、過去も知っている、
場合によっては家族のことまで知っている主治医から
その時の現象からだけではない、
総合的な診断やアドバイスをもらうとホッとしますよね。
また、ホッとするだけなく、
医療の専門家から、的確なアドバイスをもらうことにより
その後、自分にとって何が必要で、また何が必要ないのかが分かり、
知見に裏打ちされた正しい判断ができる確率が高まりますよね。
ましてや、ただでさえ体調が悪かったり、心が動揺している時に、
余計な体力や労力、それに出費を抑えることにもつながりますよね。
そして、大抵はそこでもらったアドバイスや薬を飲んで
大事には至らず、元気になっていくものですが、
まれに、主治医の診察で普通の養生では回復が困難との判断がされたり、
もしくは、高度な検査をして専門的な医療の必要性があると判断されれば、
その主治医の紹介により、
地元もしくは大都市の設備の整った大きな医療機関での診断や診察が
勧められる、といった流れで、次のステップに進みます。
私の経験では、自分で判断して、
いきなり大病院で検査や診察を受けるよりも、
地元の主治医の紹介状を元に
大規模病院で診察や検査を受ける流れの方が、
対応が良いだけでなく、
無駄な検査や待ち時間が圧倒的に少なくなり、
結果的に、妥当な診断や治療が受けられた
という経験があります。
それは、きっと、
先程来お伝えしている通り、
自分のことをよく知る主治医が
自分の情報をきちんと次につないでくれているからだと思います。
さて、以上より、
これまでもお伝えしてきたように、
不動産の世界と医療の世界は大きな類似性があると思っています。
しかし、
医療の世界には「まち医者」がいるにも関わらず、
なぜ、
不動産の世界には「不動産のまち医者」がいないのか?
私は、そんな思いをずっと抱いてきました。
次回に続く。