テナント契約における定期借家契約のメリットと運用方法のリスクと注意点

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こんにちは。
テナント物件専門の不動産コンサルタント、
チャレンジ・スペースの梶谷です。

貸店舗や貸事務所、貸しビルなどのオーナーさんであるみなさん、定期借家契約をきちんと運用されていらっしゃいますか?

私の会社では、賃貸借期間の途中から管理会社の変更で依頼されるケースが結構あります。

テナントとのトラブルや、テナント特有のお困りごとなどを抱えていらっしゃるオーナーさんからのお問い合わせが中心です。

その中でも、定期借家契約の再契約から依頼を受けるケースがあります。

その際、これまでまの従前の契約書を拝見させて頂くのですが、それが定期借家契約の法的要件を満たされていない可能性の高い契約書があることがあります。

テナント経営をされていらっしゃるオーナーさんならよくご存知の定期借家契約ですが、

更新のある普通借家契約とは異なり、
契約期間が終了すると、
貸主の正当事由に関係なく、
契約を終了させることができる

2000年(平成12年)3月施行の
日本では新しい契約形態です。

実はよその国では
また、日本でも戦前までは
定期借家契約しか存在しません。

よく考えてみると、
不動産以外の一般の賃貸借でも、

契約期間が終わったら
借りていた物を返すのは当たり前ですよね。

引き続き借りたい場合は、
貸し手と再度話し合い、
再度条件が合意されれば再契約する
という流れだと思います。

ところが、戦時中からのようですが、
日本では、一度貸したら、
余程の事がない限り、貸した物を簡単にはかえしてもらえない、

つまり、更新されてしまう、
というのが普通借家契約になります。

ただ貸主としても、
決められた賃料をきちんと支払い、
入居中のマナーの良い借主であれば
別に問題ないのですが、

そうではない借主の時に
契約を解除して明け渡しを求めるためには、

そう簡単には認めてもらえにくいだけでなく、

仮に法的な要件を満たしたとしても、
それなりの時間と労力、
それに金銭的な負担がかかってしまう
というのが実態です。

さらに、建て替えを計画しても、
普通借家契約の入居者がいれば、
貸主だけの都合で計画を立てることは
中々難しく、

現実的には、立退料がかかるケースが
多いのではないでしょうか。

そのような、諸外国と比べて
借主保護が著しく強い普通借家契約の使い勝手の悪さを解消した、

契約期間が満了したら
確実に明け渡しを求めることができる
定期借家契約ができたわけですね。

実は、この契定期借家契約の法律制定時の趣旨としては、

優良な住環境を促進する

ことにあったようです。

つまり、
余程の事がない限り、契約が更新されてしまう普通借家契約とは異なり、

定期借家契約では、
マナーの悪い借主とは、契約期間の満了とともに契約を打ち切り、再契約をしない事ができます。

定期借家契約には、そもそも更新という概念がありませんから当然といえば当然ですよね。

そして、優良な入居者に対しては、大家さんとしては、建て替えとかを計画していない限り当然末永く居続けてもらいたいため、再契約に応じるようにします。

さらに、この事を、
つめり、再契約の条件を最初の入居の段階で借主に伝えておくことによって、

入居期間中、借主がマナー違反をしないようになるインセンティブが働くという訳ですね。

入居期間中の管理もしやすくなるはずです。

さらにもう一つメリットが考えられます。

それは、そのような意識の入居者が増えることによって、

必然的に建物全体に占める優良入居者の割合が高まり、住環境が良い状態で維持されてくるということです。

それによって、当然、物件の評判が高まるだけでなく、賃料下落も防止できます。

つまり、物件の価値を維持できるわけですね。

以上、この定期借家権制定における真の立法趣旨なのだと思います。

現実には、街中の賃貸物件では、
建て替えを想定した築年数の経った建物で使われているケースが多いですね。

もたろん、それも正しい使い方だと思いますが、このような物件では、
契約期間が短いこともあり、
定期借家契約は借主からは倦厭されがちで、
そのため、賃料設定も低くしているケースが多いのではないでしょうか。

しかし、新築物件や、大手の大規模物件では、最初から定期借家契約できちんとした賃料設定で募集しているケースが多いですよね。

本来の定期借家契約の趣旨に近い使い方がされていると思いますね。

特に商業施設などでは
こちらはテナントの入れ替え、
つまり、常に旬で勢いのあるテナントに施設内に入っていてもらうためにも
入れ替えのしやすいように定期借家契約を採用しているケースも多いと思います。

以上のように、
定期借家契約には、
従前の普通借家契約とは異なり、

貸主だけでなく、借主にとっても
その使い方次第で様々なメリットがあるわけですが、

一つ大きな落とし穴があります。

それは、契約の運用の仕方を誤ると、
定期借家契約としての効力がなくなり
普通借家契約にみなされてしまう
ということです。

いくつかの要件があるのですが、

まずは契約締結時に
公正証書もしくは書面で契約を締結しなくてはならないとうことです。

不動産の契約なら当たり前だと思うかもしれませんが、

従前の普通借家契約では、
間に不動産屋が入らないで、
当事者同士で貸し借りをする場合は、

重要事項の説明義務もありませんし、
また、契約書を書面として作成する義務もありません。

つまり、口頭でも大丈夫だったわけですね。

身内や親戚同士の貸し借りでは
このようなこと、結構多かったのではないでしょうが。

ところが、定期借家契約では、
間に不動産屋が入ろうが
もしくは直接の貸し借りであろうが

必ず、書面で契約書を作成する必要があります。

もし、後でトラブルになり、
契約書を作成していなかったらどうなるのか?

定期借家契約としての要件を満たしていないので、
普通借家契約とし見做されてしまい、

期間が満了しても、
基本的には更新されてしまう
ということになります。

これは結構大きいですよね。

さて、定期借家契約の要件は
まだ他にもあります。

例えば、契約書の中に

この賃貸借契約は更新がなく、
期間満了で契約が終了し、
明け渡さなくてはいけないこと

などといった文言を
盛り込んでおく必要があります。

また、契約締結前に、
契約書とは別の書面を発行して

この契約が定期借家契約である旨の
事前説明をする必要もあります。

しかも、その義務は
不動産会社ではなくて
貸主に課されています。

実務的には、弊社では
貸主の代理として我々が説明をしていますが。

その他にも要件はありますが、

その他、実務上大切な要件としては、
契約期間満了、つまり契約終了の事前通知というものがあります。

契約期間が一年以上に設定されている定期借家契約においては、

期間満了の一年前から6ヶ月前までに、借主に対して、期間満了により賃貸借が終了する旨の通知をする必要があります。

これをしていないと、
契約の終了と明け渡しを借主に主張できなくなってしまいます。

以上が定期借家契約の主な法的要件ですが、

これらを満たしていないと、
定期借家契約であることを借主に主張することができないだけでなく、

場合によっては、
普通借家契約とみなされてしまう

なんていうことにもなってしまいます。

実務において定期借家契約は、
様々なメリットがあり、
世界標準の不動産賃貸借が可能になることから、

テナント物件や投資物件、
大手不動産会社などが扱う物件では
広く使われています。

ただし、今お伝えしたように、
法的要件を満たさなかった時に被る損害は、決して小さくないため、

定期借家契約の運用においては、
要件をきちんと把握することが
とても大切になってきます。

ご自身でやられる場合はもちろんですが、

不動産会社に契約や管理を任せる場合にも、

担当者がきちんと
定期借家契約の法的要件や運用方法を把握しているか、事前に確認してみてるください。

少し脅かしてしまいましたが、
でも、運用方法をきちんとすることによって、

貸主だけでなく借主にとっても、
ひいてはまちづくりにおいても
これ程素晴らしい効果が見込めるものはないのではないのかな、と個人的には思っています。

以上、貸しビルや貸店舗、貸事務所などのテナント物件の賃貸経営において、必須とも言える定期借家契約について、

そのメリットとトラブル防止の視点で、ポイントをかいつまんでお伝えさせて頂きました。

貸ビルや貸店舗などのテナント経営をされている
不動産オーナーの方々のご参考になれば幸いです。

合間の細切れ時間に執筆している関係上、誤字脱字などありましたらどうかご容赦ください。見直す時間があったら修正させて頂きます。

今回も最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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