横浜の不動産コンサルタント、
チャレンジ・スペース梶谷です。
さて、本日は、
テナントとの間で結ぶ事業用の建物賃貸借契約について、
その中でも、テナント物件ならではの
「プロなら必ずチェックする重要ポイント」について
入居後のトラブル防止とう観点を入れてお伝えしていきます。
賃貸経営では、
特に、様々な種類のテナントが入居し、
トラブルの種類や数も圧倒的に多いテナント経営においては、
それら想定して、契約前に予めきちんと検討及び整理をし、
当事者間で合意しておくことは、
入居後のトラブル回避だけでなく、
優良テナントの育成にも繋がり、
長期的には所有不動産の価値向上にも繋がります。
投資用不動産の世界では、よく
「賃貸借契約書こそが、その投資物件の価値である」
とも言われます。
特に、事業用のテナント不動産においては
賃貸借契約書は大切な役割があります。
それでは、第二回目のセミナー内容です。
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さて、今回のメールセミナーでは、
テナント不動産のプロなら必ずチェックし、見落とすことのない
テナント物件ならではの重要ポイントを3つご紹介します。
●「退去時」に関する取り決め
●「物件の用途や使い方」に関する取り決め
●「内装工事」に関する取り決め
【1】退去時に関する取り決め
まず1つ目は、退去時に関する取り決めです。
契約終了時にトラブルになる確率が高いのは、
必ずと言っていいほど、この部分です。
これからテナントが入居するという晴れの舞台の契約締結時に、
退去や撤退の話をするのはなんとも不吉だ、
と言われるかもしれませんが、
世の中の不動産を含めたほとんどの投資では、
投資の出口戦略、つまり投資から手を引くときの事柄を
投資の意思決定をする前に決めてから投資を始めるものです。
大家業として考えると、
「投資」という言葉は、あまりピンとこないかもしれませんが、
賃貸経営は、規模の大小に関わらず、立派な「投資」です。
特に、テナント不動産、こと店舗物件では、
不動産オーナーにとっても、入居するテナント側にとっても
退去時に関して事前にきちんと取り決めておくことは必須です。
その理由は、店舗物件においては、
ほとんどのケースで、内装工事を施すからです。
また、オフィス物件の場合では、
最初から事務所仕様に内装が施されているケースが多いですが、
退去時に、内装の原状回復が義務付けられていると思います。
ある程度の規模のオフィスビルともなると、
入居期間の長短に関わらず、壁紙などを貸主側の指定業者を使って
取り替えることが条件設定されているケースも多い
のではないでしょうか。
さて、一般消費者と契約を結ぶ住宅とは異なり、
事業用テナント物件における賃貸借契約では、
あくまでも当事者間の契約が全てになってきます。
そのため、当事者間での決め事がとても重要になってきます。
それゆえに、一般の賃貸住宅との違いについて
テナントへ事前に説明をしていなかったり、
口頭だけで契約書等の書面に残していなかったり、
契約書に記載していたとしても、
契約締結前の説明不足があったりなど、
両者の認識違いによる理由で
トラブルになる可能性が大いにあります。
昨今、住宅では、
経年劣化や自然損耗についても原状回復義務を課す場合は、
契約書などで、特約としてきちんと謳うだけでなく、
事前に借主に対して、別途、書面による説明を行うことが
地域によっては義務付けられるようになってきましたが、
先程、お伝えしたように、事業用物件においては、
あくまでも当事者間の契約内容が全てとなってくるため
そのことを知らない、つまり住宅と同じ知識しか
持ち合わせていないテナントにとっては、
契約内容の理解不足のまま契約締結に至った場合など、
寝耳に水、ということにもつながってくるわけです。
そのため、この原状回復に関する事項に限らず、
いくら法的手続には問題はないとしても、
トラブルなく、スムーズな契約関係を構築するためには
何よりも、契約締結前までに、契約内容について
きちんと入居者が納得するように、事前に丁寧に
納得を頂くよう説明する必要がある、ということです。
それによって、例えば、原状回復について言えば、
テナント側にとって、入居前に退去時のことまで含めた、
大よその全体的な金銭的目途が付けられるだけでなく、
不動産オーナー側にとっても、
いつ訪れるか分からない退去時のトラブルに不安を持つことなく、
長期的に安心した不動産経営ができるようになるわけです。
さて、退去時に関する事柄については、同じテナント物件でも、
店舗物件とオフィス物件ではだいぶ異なってくるため、
2つに分けてお伝えします。
まずは、比較的シンプルなオフィス物件から見ていきます。
事務所物件では、先程もお伝えしたとおり、
内装を施した状態でテナントへ引き渡すケースが多いです。
そして、退去時は、
多くのケースでは、少なくとも壁紙を、
物件によっては、床・天井の張り替えも
原状回復義務の一環として、
予め条件付けられているケースが多いです。
その際、退去時にテナント側が自分で業者を探して見積りをとり、
工事の施行ができるような契約内容であれば、
テナント側としても
自分の努力次第で費用を下げることもしやすいため
あまり問題に上がることは少ないのですが、
ある程度の規模やグレードのビルや新築ビルでは、
原状回復工事の実施に際し、貸主の指定業者の使用を義務付け
ている契約内容のケースが多く、
退去時にトラブルが多いのが現実です。
不動産オーナー側としては、
次のテナントに貸し出す時の内装を、一定のレベルに保ちたいとか、
自身の物件に手を入れる業者を、信頼できる業者に限定したい
などの理由で、
確かにもっともだとは思うのですが、
こと、原状回復工事にお金を出す側のテナントとしては、
実際に退去する時に、どの位のお金がかかるのかが想定できない
という不安もあるようです。
現実に多いトラブル事例としては、
実際の退去時に、貸主側から提示された原状回復工事の見積額
を見て、初めて事の大きさに気付き、
その後、入居時に締結した契約書を改めて見返してみたら、
「指定業者を使用することと」と記載されているため、
どうして良いのかわからなくて、相談されるというケースです。
結果的には、契約書通りなる、
という、テナントにとっては厳しい現実が多いとは思いますが、
中には、強引に交渉し、
貸主側の譲歩を勝ち取るケースもあるようです。
いづれにしても、このようなトラブルは
両者にとって不利益であることは間違いなく、
場合によっては、原状回復工事が物理的に進まず、
次のテナントへの引き渡しができない、
なんていうことになれば、その損害は計り知れません。
最悪のケースでは、テナントが経営上のトラブルで、
金銭的に苦しい状態で退去する事態になった場合、
いかに契約書にはきちんと記載されているからと言っても、
テナント側にお金がなければ、
かつ、預り保証金(敷金)でも足りないケースでは、
次のテナントに貸し出すための原状回復工事を
泣く泣く貸主側がやらざるを得ない、
という事態も十分ありえます。
いづれにしても、このようなトラブルを未然に防ぐためにも、
まずは、契約時に、原状回復のやり方や詳細について、
テナント側に、丁寧に納得するまで説明する必要があります。
個人的には、この点についての説明は、
相手に「しつこい!」と思われる位でちょうど良いのではないか
と思っている次第です。
中には、契約前に丁寧に説明をしすぎると、
ハンコを付いてもらえなくなるのではないか、
と心配する営業成績重視の不動産営業マンもいるかもしれませんが、
それはご法度です。
さて、次に店舗物件についてです。
店舗物件で注意が必要なのが「居抜き」という言葉です。
それについてお伝えするにあたって、
店舗物件の原状回復における、そもそもの「原状」について、
つまり、テナントに貸し出す時の「最初の状態」、
言い方を変えると、退去の時に返してもらいたい状態について
改めて整理してみます。
これには大きく分けて3つの形態があります。
1つは、床・壁・天井といった
基本的な内装の施された状態の物件です。
しかし、こちらはどちらかというと、
募集の段階では、店舗と事務所の両方で募集にかけられているケース
が多いですね。
そして、原状回復に対する考え方は、
先程お伝えしたオフィス物件と同様のケースが多いように思います。
2つ目は、スケルトン状態の物件です。
「スケルトン状態」とは、
一般的に、床・壁・天井といった内装や、
そして、空調などの各種設備が何もない、
建物の躯体、コンクリート等が剥き出しの、
内装・付帯設備が何もない状態の物件のことです。
完全なるスケルトンの物件では、
基本的には、トイレもない状態となります。
この「スケルトン」という言葉は、
現実的には、使っている人によって、
まちまちな使われ方がされていて、
広義の意味としては、
オフィス物件のような内装が完備されている状態ではない物件、
と考えておいた方が良いのかもしれません。
スケルトンという言葉を聞いた時は、
相手がどの程度の状態のことを意味しているか
きちんと確認されることをお勧めします。
さて、原状回復という観点から考えると、
様々な点で複雑な店舗物件ではありますが、
スケルトン物件については、とてもシンプルです。
しかし、テナント契約時には大切なポイントが幾つかあります。
1つは、スケルトン状態とは、一体何なのか?
という定義を、契約書に言葉や図面、または資料できちんと
明示しておく必要があるということです。
その理由は先にもお伝えした通り、
言葉自体の捉え方が人によって、マチマチだからです。
また、新築物件などにおいては、特にテナントビルで、
内装工事の取り決めが複雑なケースでは注意が必要です。
さて、最後の3つ目は「居抜き物件」についてです。
居抜き物件とは、みなさんもよくご存知の通り、
前のテナントが施した内装や設備を、そのままの状態で
次のテナントに貸し出す物件のことを言います。
さて、この「居抜き」という言葉も、
実は言葉が一人歩きしている状態で、
人によって様々な意味で使われているというのが現実です。
以下、あくまでも私の頭の中での使い分け
と言う前提で分類してみます。
まずは、インターネットで
居抜き物件専門サイトというものをご覧になった方
もいるのではないかと思いますが、
掲載されている各物件の詳細情報をよく見てみると、
賃料や保証金などの金銭的条件の中に、それ以外に
「造作譲渡料」や「譲渡手数料」という言葉が
記載されているのを見たことはありませんか?
これらのサイトは、
退去を予定しているテナントが、退去前に、
次のテナントを予め見つけておくためのマッチングサイトで、
退去予定のテナントにとって最大のメリットは、
退去時に伴う原状回復費用がかからない、
もしくは少なくて済む、ということです。
特に、店舗では、
各業態ごとに様々な内装・設備を施していますよね。
場合によっては、その撤収費用は、設置費用と同じくらい
高額になるケースもあり、
ただでさえ事情があって退去するテナントにっては
とても大きな負担になっています。
さらに、その内装・設備を、
次のテナントがそのまま利用してくれて、
しかも、内装・設備という前テナントの資産を
次のテナントに売却できるのなら、
なおのこと、金銭的な負担が軽減される、
という大きなメリットがあるわけです。
一方、次のテナントの立場になってみると、
テナント出店の大きな初期費用の一つである
内装・設備の設置費用が抑えられる、ということで、
これまた、金銭的に大きなメリットがあるわけです。
さらに、前店舗の廃業から時間の経過した場所で商売を始める
という心理的デメリットも極力抑えることができるわけです。
以上、個人的にはとても素晴らしいシステムだとは思いますが、
貸主である不動産オーナーとしては幾つかの注意点があります。
その一つとして、以上の流れが実行されるためには、
不動産オーナーの事前承諾が必須である、ということです。
テナント物件では、こと店舗物件では、
不動産オーナーにとっては、金銭的な条件と同様に、
いや、それ以上に、どのようなテナントが入居するのかが
入居後のテナント管理の面で非常に大切になってきます。
つまり、次のテナントをきちんと見極めてから
入居の可否の判断をする必要があるということです。
さて、「居抜き物件」については、
実は、勘違いしやすい大きな事柄があります。
それは、「居抜き」という言葉の捉え方が
人それぞれ異なるということです。
一言で、「居抜き物件」といっても
実は、2つの形態があると考えられます。
1つは、今お伝えした、
前後の借主間で造作譲渡を伴う居抜き物件です。
インターネットの不動産サイトなどでは、
こちらのことを指しているケースが多いのではないかと思います。
しかし、不動産業者間や、一般の方が不動産会社と話したり、
不動産会社が作成する物件情報図面には
もう一つの形態の方が多いのではないかと感じています。
それは、「残置物物件」というものです。
さて、「残置物」とは何か?ですが、
例えば、ある店舗が廃業したとします。
中には、廃業前に、不動産オーナーに了解を取って、
先程お伝えしたような「居抜き物件」として募集し、
退去前に次のテナントを決めて、
前後の借主間で造作の譲渡をするケースもあると思います。
しかし、その全てが、思うように事が運ぶとは限りません。
様々な理由で、退去前に次のテナントが決まらなかったとします。
実際には、このようなケースの方が多いのではないかと思います。
そして、いざ、退去の期限が到来するとします。
この時には、当然、テナントは契約書通りに、
つまり、一般的な店舗物件では
「スルトン」状態が原状と定められているため、
自身が施した内装・設備の一切を撤去して
貸主に期日までに返還するのが基本となります。
ところで、この時点において、
不動産オーナーとしては、2つの選択肢が考えられます。
1つは、契約書通りに原状回復を行ってもらう、
というものです。
もう1つは、内装や設備の状態を見て、
これはスケルトンにするよりも、
その全部、または一部をそのまま残しておいてもらった方が
次のテナント募集にとっては有利だな
というケースでは、原状回復義務の全部もしくは一部を
両者の話し合いの中で免除するというケースです。
しかし、実際、次のようなケースが
残置物物件の発生原因として多いのが現実です。
例えば、資金不足で原状回復できないケースや
最悪のケースでは、ある日突然の夜逃げなど、です。
また、これに付随してよくあるケースは、
これらの理由から
最終的に、貸主が原状回復して次のテナントに貸し出そうにも、
預かっている保証金だけでは金額が足りずに、
しかも、貸主にも資金的な余裕がなく、
仕方なく、そのままになっている、
つまり「残置物」物件になっている
というケースが、多いように思います。
このことからも、店舗物件においては
保証金の設定はとても大切な要素になってきます。
さて、居抜き物件や残置物物件として、
次の新たなテナントと契約する際、大切なことが一つあります。
それは、次のテナントとの間で結ぶ賃貸借契約書に、
退去時の原状回復の「原状」をきちんと定義しておくことです。
前後の借主間の造作譲渡で内装や設備の譲渡をした場合、
それは、あくまでも貸主が借主の要望を聞き入れて、
前借主の原状回復義務を特別に免除し、
新借主にその義務を引き継がせることを認めたということです。
そのため、次のテナントの退去時は
前借主が借りた時の最初の状態が「原状」である、
例えば、「スケルトン」状態であれば、それが「原状」である
ということを、きちんと契約書の中で明記しておく必要があります。
「残置物物件」でも、新しいテナントが退去する時に
貸主としては、どのような状態で返還してもらいたいのかを、
契約締結前にきちんと説明をして、納得してもらってから
それをきちんと契約書に明記して契約を締結する必要があります。
これらのことを忘れていてトラブルになった場合、
最終的に一番困るのは不動産オーナーになりますので
くれぐれも注意してください。
さて、退去時の取り決めに関するもう一つの大切なポイントに、
「償却」があります。
事業用テナント物件では、
保証金の「償却」といった項目で条件設定されることが多いです。
これは、原状回復費用とのからみで、
契約前の説明時に、頻繁にテナント側から質問を受ける項目です。
そのため、テナントに対して、契約締結時に、
きちんと理解してもらえるよう説明しておかないと、
退去時に金銭トラブルになりやすい部分です。
具体的には、
そもそも「償却」の意味を理解してもらっていないことが
トラブルの原因になるのではないかと思っています。
テナントとしても、
保証金や敷金の「償却」については、
「礼金」と同様に戻ってこないお金である
との理解まではあるのですが、
その償却費の意味合いについての理解は低く、
さらに不動産会社の担当者からの説明も明確にされていない
というのが現状に思います。
つまり、その償却費は、
退去時の原状回復費用に充当されるのか?
それとも、礼金的な意味合いなのか?
通常は、後者のケースが多いのではないでしょうか。
しかし、その「通常」はあくまでも
貸主サイドにとっての「通常」観念であるため、
借主サイドからは、
様々な考え方や疑問点を投げかけられることが多々あります。
以上より、保証金や敷金の「償却」がある場合は、
原状回復義務の内容と併せて、
その性質、つまり実質の中身を丁寧に説明することが
相互の認識の相違やトラブルの未然防止に繋がります。
併せて、先程お伝えした原状回復の話になりますが、
通常損耗や経年劣化についても借主に原状回復を求める場合は、
契約書の中に、特約事項としてきちんと明記し説明することが
トラブル防止のためには重要です。
以上、テナント契約時の最重要ポイントとなってくる
退去時の取り決めについて、概要をお伝えしてきました。
このパートでは、あと2つ程、
テナント契約時のポイントについてお伝えしようと思っていますが、
だいぶ長くなってきましたので、要点を絞ってお伝えします。
【2】物件の用途や使い方に関する取り決め
賃貸経営を行う不動産オーナーにとって、
賃貸トラブルの代表選手は、賃料の滞納かもしれませんが、
いざ、トラブルが発生した時に、
その解決において最も労力を要するものの一つとして、
物件の使い方に関するトラブルがあります。
さて、物件の使い方に関するトラブルを原因別に分類すると、
大きく次の二つに分けられます。
●人的原因に由来するトラブル
●契約事項に由来するトラブル
前者は、すなわち、
入居者の態度や性格、または貸主や管理会社との人間関係
に端を発するトラブルです。
このための対策としては、
まずは何と言っても、入居審査の徹底です。
トラブルになりそうな人を入居させないことが
事前防止の観点では最も重要になります。
さらに、契約時や入居後に
入居者に対して物件の使い方の説明を丁寧に行うと同時に
日常のコミュニケーションもとても大切になってきます。
これについては、明日お届けするメールセミナーで
「テナント管理」の詳細についてお伝えさせて頂きます。
さて、ここからは、
後者の「契約事項に由来するトラブル」について、
掘り下げていきたいと思います。
テナント入居後のトラブル発生において、
その原因を追究していくと、
結果的に、テナントによる物件の使い方、
つまり、用途に関する取り決めが甘かった、
ということに、多くの原因が潜んでいるように思います。
中でも一番やっかいなのが、
当初想定していた用途や使い方とは異なる利用がされている
というトラブルです。
つまり、契約書に記載されていない使い方で
物件が使用されているということです。
実は、これは、事前に対策を打つことによって
防ぐことができます。
にも関わらず、テナント物件では、特に店舗物件においては
この種の防げるはずのトラブルが多いのが現状です。
一般の賃貸住宅においては、入居者が物件を利用する用途は、
基本的には、入居者自身が住むための「住居」になります。
たまに、契約書には
「住居」としての用途しか認められていないににも関わらず、
勝手に、自宅で仕事を始めて、
不特定多数の人が頻繁に出入りするようなことがあって
問題が発覚するというようなケースがあります。
このようなケースは、明らかな契約違反になります。
一方、テナント物件では、
オフィスとして利用したり、店舗においては業種業態によって
その使い方や用途は千差万別になってきます。
そのため、テナント物件においては、
契約段階で、その用途を限定しておかないと、
気が付いた時にはとんでもない使われ方をされていて、
しかも、契約書にはアバウトに記載されているため、
純粋に契約違反とも言いきれない、
なんていう契約書が多く存在し、
いざという時はどうなるのだろう?
と心配になる契約書をお見受けすることが多々あります。
当初想定した使い方とは異なる物件利用がなされると、
他のテナントや近隣など、該当物件以外の周辺に
迷惑をかけてしまう可能性があり、
不動産オーナーにとっては、
賃料の滞納問題以上に、頭を悩ます原因になってしまいます。
そのような点からも、
特に、多種多様な物件利用がなされるテナント不動産においては、
退去時の取り決めと同じくらいに、いやそれ以上に
この物件の用途や使い方に関する取り決めは
大変重要なポイントになります。
さて、テナント不動産における物件の用途は、
大きく分けると、
●事務所
●店舗
●倉庫・工場
さらに、店舗の場合は、
●飲食店
●物販店舗
●サービス店舗
さらに詳細に、例えば飲食店ならば、
●カフェや喫茶店などの軽飲食店
●焼き肉店や中華料理屋、イタリアンなどの重飲食店
など、というように、
様々な区分ができます
ちなみに、賃貸住宅の場合は、
基本的には、住宅、つまり「居住」としての用途のみです。
ところで、このような物件の「用途」以外にも、
契約書の中で、一般的には「禁止事項」や「特約」の欄に記載される
細かな「物件の使い方」も用途の範疇に入ります。
例えば、
「危険な行為・騒音・悪臭の発生、その他甲または第三者ならびに近隣へ迷惑を与える行為、建物の共同使用を乱す行為、衛生上有害となる行為、本物件及び建物内で建物保存上有害な行為、建物管理上支障をきたす行為ならびに本物件に損害を及ぼす行為、もしくはそれらの恐れのある行為等をしてはならない。」
「乙は、建物の管理・保全等のために設けられた、パイプスペース等の点検用扉及び消火栓等の前に、これらの設備の使用や扉の開閉を妨げる物品を置いてはならない。」
など、物件の具体的な使い方や制限を
詳細に説明していたりする部分ですね。
さて、入居後のトラブル防止という観点から
テナント契約における用途に関するその他のポイントを幾つか。
まずは、オフィス物件についてですが、
一般的には、業種に関わらず、その用途は、
テナント自らの事務所に限定されてきますが、
以下のケースだけは気を付けておきたいものです。
それは、オフィス物件を、不特定多数の人が来店する
「店舗」的な用途で使用する場合です。
例えば、多くの子供たちが自転車で通う学習塾や、
その他各種のサービス店舗などです。
これらの業種では、
内装や空調設備が整っている「事務所」仕様の物件
に入居するケースが多いです。
契約においては、物件は「事務所」仕様であったとしても、
実質は、あくまでも「店舗」として、
詳細な用途を限定しておいた方が
後々のトラブルは回避できるでしょう。
ところで、店舗の場合においては、
契約書に用途を明確に記載しておいた方が良い理由として、
店舗の場合、入居後にテナント側の事情により、
商売の内容が変わる可能性があるということです。
テナント入居後に、
当初とは異なる用途として物件を使われたくない場合は、
さらに、テナントに予め無理な期待を持たせないためにも
予め、明確にしておく必要があるでしょう。
また、同じ建物内に入居する他のテナントへの営業上の配慮や
周辺建物や、近隣住民、地域への配慮の観点から、
用途を限定する必要性が出てくることもあるでしょう。
例えば、テナント間での商品・サービスのバッティング
が起きないように配慮することで、
テナントの育成や、テナント間トラブルを防止するだけでなく、
建物全体やエリア全体をも見渡したテナントミックスの適正化、
つまり、健全な商環境の育成にも繋がる
という、息の長い視点にはなりますが、
長期的には大きな波及効果が見込めることもあります。
大手の商業施設では、一般的に行われていますが、、
一般のテナントビルでも、このような考え方を持って
テナントの募集や契約をしているケースも間々あります。
【3】内装工事に関する取り決め
テナント契約時のポイントの最後として、
内装工事についてお伝えします。
これは、まさに事業用テナント物件特有のポイントですが、
特に店舗物件では、必須の重要ポイントです。
ちなみに、これは先程お伝えした原状回復にも関係するため、
内容がかぶらない範囲でポイントを1つだけお伝えします。
とても、基本的な内容なことなのですが、
実は、トラブルの大半はこれに起因している
といっても過言ではありません。
それは、
内装工事等、物件引渡しの状態から
テナントが何かを変更する時には、
必ず、事前にオーナーの承諾を取ることを徹底するとともに、
後々のために、必ず書面でやり取りをし、資料を残しておく
ということです。
このことは、どの契約書を見ても、大抵は記載されていますが、
実際に徹底されているケースは少ないように思います。
特に、賃貸物件では、一旦引渡しを行うと
貸主と言えども、そう滅多には、
貸出区画の中に足を踏み入れることはありません。
そのため、契約書に記載した通りに、
すなわち、貸主にとって当初想定していた通りに、
借主が物件を使っているかどうか?
については、現実的には、
入居者との信頼関係の範疇になってくるわけです。
しかし、上記のように物件に手を入れるような機会に、
大切な確認作業を、基本に則って忠実に実行することは
トラブル防止の観点以外にも、
不動産オーナーに幾つかのメリットをもたらします。
例えば、所有物件を売却して、所有者が変わることも
長い目で見れば可能性はゼロではありませんよね。
その際、次の所有者へ、
整理された物件情報を引き継ぐことは
物件の価値を高めることにも繋がります。
また、新築物件においては、
テナントが施行した内装工事がある場合には、
不動産取得税などの税務申告において、
内装工事の内容をきちんと把握できる体制を整えておくことは
税負担軽減の面からも重要になってきます。
以上、テナント契約における代表的な重要ポイントを
3つに絞ってお伝えしてきましたが、
現実には、この他にも様々なチェックポイントがあります。
さらに、業種・業態によって異なる検討事項があったりなど、
事業用のテナント物件では、挙げたら切りがありません。
その辺については、
このメールセミナーの読者の方には特別に
個別にご相談に応じさせて頂きますので、
このメールの一番下にある私の連絡先まで
お気軽にご相談ください。
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本日のメールセミナーはいかがでしたでしょうか?
さて、明日、第三回目のメールセミナーでは、
「テナント管理が”肝”となる本当の理由」
について、お伝えしていきます。
では、また明日、お会いしましょう。