こんにちは。
テナント不動産コンサルタントの梶谷です。
貸店舗や貸事務所、オフィスビルといったテナント物件の入居審査において、
最も引っかかる部分は何だと思いますか?
●入居者の売上や資本金でしょうか?
●連帯保証人の収入でしょうか?
●人柄などの人物的要素でしょうか?
私の経験からまとめると、
上記のどれもが入居審査時に不動産会社や物件オーナーにとって
必ず確認するべき大切な事柄ではありますが、
こと事業用のテナント物件においては、
同じくらい、いやそれ以上に神経を尖らせて確認する事柄があります。
それは、入居者の「用途」です。
つまり、物件を何のために、どのように使うのか?ということです。
具体的には、
●何の商売や仕事をそこで行うのか?
●その商売によって、どのような人が、どれくらいの頻度で出入りするのか?
●営業時間は何時から何時までなのか?
などです。
特に、昔からそこで自ら商売を営んでいる不動産オーナー(貸主)
の中には気にされる方が多いです。
●自分の商売とバッティングしないかどうか?
●自社ビルの他のテナントの商売に迷惑がかからないか?
●周辺の商店や住民からクレームがこないか?
など、物件周辺における人間関係が多岐に渡る分、
色々と気を使う必要が増えてくるからです。
一方、
遠隔地の不在地主オーナーや、
個人投資家オーナーなどの中には、
余程の業種業態でない限り、
あまり用途は気にせずに入居を認めてしまうケースもあります。
また、
立地も悪く、
築年数も経過した、
空室期間の長い物件では、
どんなテナントでも受け入れてしまっているケースも目にします。
さて、物件の用途について、
ここでお伝えしたいポイントは2つあります。
一つは、
テナント物件の入居審査において、一般的な貸主は、
借主の入居後における物件の用途、
つまり店舗や事務所の業種業態や来店客の客層、
利用時間帯などの利用方法について、
とても敏感である、ということです。
その理由は先にもお伝えした通り、
自身の商売や周辺環境への配慮です。
2つ目は、
このような視点を持った不動産オーナーが所有する物件
が集まるエリアにおいては、
良好な商環境や周辺環境
が形成されやすいということです。
それによって優良なテナントや住民が集積し、
そのエリアやまち自体の価値向上
につながっているということです。
そして、巡りめぐって
所有物件の賃料や資産価値を高める
結果にもつながりやすい、ということです。
しかし、この結果が表に現れるには時間がかかる
という遅効性の問題があるため、
●テナントが決まらない
●空室が解消しない
●賃料が下落している
というような状態が長く続いてしまうと、
どうしも長期の先のことには目がいかず、
今すぐの目先の結果を求めた
悪循環の意思決定に足を踏み入れてしまい、
長期的に物件の資産価値を下げることにつながる行動
を自らとってしまう、
という残念なケースが非常に多いわけです。
いかがでしょうか?
テナント物件の借主にとっては、
あまり関係のないような話に聞こえるかもしれませんが、
実は大きく関係しているのです。
なぜなら、店舗や事業所といったテナントが
エリアやまちを形作っているからです。
そのため、物件を貸す不動産オーナーとしては、
どのテナントが入ると一番賃料が取れるかな?
という視点だけではなく、
●どのテナントを入れるとエリアの魅力が高まるのかな?
●そうしたら、何年後には所有物件の価値はどのくらいまで高まっているのかな?
という所有物件の「資産価値」を高める視点
をもつことが大切ではないでしょうか?
一方、
物件を借りるテナント事業者としても、
最も集客しやすくて、費用がリーズナブルな物件はどれかな?
という視点だけでなく、
●どの物件が自分の商売と親和性があるのかな?
●どこのエリアやまちが自分達を一番求めてくれているのかな?
●エリアやまちの価値を高めるために貢献できる物件はどれかな?
などという視点もこれからの時代、
間違いなく重要なポイントになってきます。
物件の「用途」は、
テナント物件の貸主や借主だけでなく、
物件周辺のエリアやまち全体をも巻き込んだ
とても重要な要素になります。
ぜひ、テナント物件の関係者の方々には、
自分たちの利害を超えたところに、
実は長期的な自身の利益の源泉が隠されている、
という視点で、まだ多くの人が気付いていない宝物探し
をしてみてはいかがでしょうか。
このような視点を持った実践の事例は
追々お伝えさせて頂きたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。