先日、神奈川県商店街振興組合連合会が開催した「商店街における空き店舗の在り方研究会」という勉強会に専門家として参加しました。
私と主催者事務局(神奈川県中小企業団体中央会)の方以外には、県内の某有名商店街の理事長以下役員の方々が参加されていました。
この商店街は、全国的にも有名な人気の商店街で、私が何かをお伝えするというよりも、現場の成功事例やその歴史、そしてその成功マインドをお聞きしながら、正直私自身が勉強させて頂いた思いです。
お話をお聞きしながら一番印象に残ったことは、やはり何でも成功者として実績を上げられている団体や組織には、その中心に核となる強い思い入れと強力な実行力を備えたリーダーがいらっしゃるということです。
特に、一国一城の主である商店主を多数まとめる商店街の中心人物の方々には様々なご苦労があり、商店街のリーダーには、ただ単に良い企画を作って、それを人に伝えて、その賛同を求めて、それを実行するという実務能力だけでなく、人の心を動かす魅力や、不撓不屈の精神力、様々な困難があってもやり切る実行力、そしてまちや地域、そして関係する人達を思う愛情が求められると思います。
こと、シャッター商店街や空き店舗対策というと、これまでは他の地域での先進成功事例やノウハウの紹介、コンサルタントの招致、またはイベントの開催など、他力本願のノウハウやお金にまつわる話が多かったと思いますが、やはり関わる中心人物達の当事者意識に基づくマインドが最も大きな要素になるということを改めて痛感させられる研究会への参加でした。
その中で、私は空き店舗対策の専門家として参加したので、特に、不動産オーナー(家主、大家さん)の重要性についてお伝えさせて頂きました。
会合の中では、商店街組合のトップの立場として熱いお話しをされている理事長ご本人も、やはり不動産オーナー(家主)であるという事実は大きいなあ、と思いながらお話しをお聞きしました。
貸店舗や貸ビルなど、長年、テナント賃貸の現場にいる身として常々感ずることは、物件を賃貸する不動産オーナー(家主、大家さん)が賃貸する動機は千差万別だということです。
一般的には、空き店舗や空きビルだと、テナント収入が入ってこないから、当然、不動産オーナー(家主)は困っているだろう、と思われていますが、実はそれは一概には言えない、というのが正直な実感です。
それについてはまた別途お話しさせて頂くとして、だからこそ空き店舗や空きビルなどの空室問題は、単に、景気や人口動態、需要と供給の問題として片付けられない側面があるのです。
つまり、貸主である不動産オーナーにとって、色んな理由(動機)で空き店舗になっている可能性があるということです。
それを理解しないと、空き店舗対策やシャッター商店街の問題は中々解決しないものと思います。
私は調査をしたこともないのでよく分かりませんが、空き店舗関係の調査で分母に組み込まれている物件はごく一部なのではないかな、とも思っています。
なぜなら、そもそも貸すつもりがなくて空いたままになっている物件について、家主自身が空き店舗と認識していない可能性もあるからです。
結局、賑わいのある商店街には商店街活性化に強い思いのあるキーマンがいるのと同様に、空き店舗や空きビルなど空室にしないための強い思いを思っている不動産オーナーがいる、ということだと思います。
テナント賃貸の現場にいて、常々強く思うことは、我々不動産業界で働く者や、ビルオーナーや大家さんといった、テナント物件に慣れ親しんでいる者とは全く異なる感覚を、借りる側、テナント側は抱いているケースが本当に多いということです。
つまり「場所」や「空間」というものを、我々以上に貴重な存在として認識しているケースが多いということです。
どんなにネット社会が進展しようと、我々はこの現実世界で生きる限りは、三次元の「空間」と接する必要が出てくるわけですから。
もちろん、ネット社会の進展により、これまでリアルな店舗やオフィスでやっていた商売や業務がバーチャルのネット空間に置き換わることは沢山あるでしょう。
しかしその反面、ネット社会の進展とともに、リアルな空間の新たなニーズも同時に生まれてきています。
特に、「居住」という用途にほぼ限定された住宅物件とは異なり、時代の変遷とともにありとあらゆる用途での利用が広がっていくテナント(店舗)物件ではその傾向が強いのではないかと思います。
話が広がりすぎてしまいましたが、要は、シャッター商店街の問題や空き店舗対策を考えるにあたっては、表面的な事象だけに囚われることなく、関係者、特に物件を所有している不動産オーナー(家主、ビルオーナー)の思いを考慮すること抜きにしては抜本的な対策はないのではないかと考えています。
やはり、所有権というものはとても大きな権利です。
不動産オーナーが首を縦に振らない限りはその物件にテナントは入らないわけですから。
不動産オーナーにぜひお伝えしたいことは、
不動産オーナーの力は本当に大きい!
極論かもしれませんが、
不動産オーナーがまちを作っている!
と言ってもいいくらい、まちに対して大きな力を持っている、ということをぜひ心に留めて頂きたい、と本気で思いながら、日々、不動産オーナーとの仕事に向き合っています。
以上より、空き店舗対策やシャッター商店街の問題における解決の大きなポイントは、このようにまちに対して大きな潜在的な力を持っていて、かつ色々な思い(動機)を抱えている空き店舗や空きビルを所有する不動産オーナーに対して、いかに彼らが抱いている不安を解消するのか、ということなのではないかと考えています。
長くなりましたので、これについてはまた別途お伝えできればと思います。
動画でもお伝えしていますのでよろしかったらご覧ください。
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